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有料職業紹介会社が押さえるべき「特定就職困難者コース」5つのキホン

2025.12.05

有料職業紹介会社が押さえるべき「特定就職困難者コース」5つのキホン

はじめに

有料職業紹介事業者にとって、雇用関係助成金の取扱いは、クライアント企業への付加価値提供と求職者の就職率向上の両方を実現する強力なツールとなり得ます。

本記事では、数ある助成金の中でも特に活用頻度の高い「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」について、助成金取扱事業者が必ず押さえておくべき5つの基本ポイントを、実務上の注意点も交えながら分かりやすく解説します。


キホン1:そもそも「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」とは?

この助成金は、高齢者(60歳以上)や障害者など、特に就職が困難な方々をハローワークまたは民間の職業紹介事業者の紹介により、継続して雇用する事業主に対して支給される制度です。

制度の目的

就職困難者の方々の雇用機会を増やし、安定した雇用を確保することにあります。

紹介会社のメリット

紹介会社としては、この制度を深く理解し活用することで、以下のことが実現できます。

  • クライアントの採用コスト負担を軽減
  • より幅広い人材のマッチングを実現

キホン2:どんな「人」を紹介すれば対象になる?(対象労働者)

助成金の対象となるのは、以下のいずれかに該当する求職者(対象労働者)です。

💡 原則: 雇入れ日時点で満65歳未満である必要があります。ただし、「60歳以上の者」については65歳以上でも対象となる特例があります。

対象となる求職者の類型

高齢者

  • 60歳以上の者

障害者

  • 身体障害者
  • 知的障害者
  • 精神障害者

家庭環境などに関する方

  • 母子家庭の母等
  • 父子家庭の父(児童扶養手当を受けている者に限る)

その他

  • 中国残留邦人等永住帰国者
  • 北朝鮮帰国被害者等
  • 認定駐留軍関係離職者(45歳以上の者に限る)
  • 沖縄失業者求職手帳所持者(45歳以上の者に限る)
  • 漁業離職者求職手帳所持者(45歳以上の者に限る)
  • 手帳所持者である漁業離職者等(45歳以上の者に限る)
  • 一般旅客定期航路事業等離職者求職手帳所持者(45歳以上の者に限る)
  • 認定港湾運送事業離職者(45歳以上の者に限る)
  • アイヌの人々(北海道に居住する45歳以上で、ハローワーク等の紹介による場合)
  • ウクライナ避難民
  • 補完的保護対象者

重度障害者等の特例

特に、「重度障害者等」(重度身体障害者、45歳以上の身体障害者、重度知的障害者、45歳以上の知的障害者、精神障害者)を雇い入れる場合は助成額が手厚くなります。

また、重度障害者等を週の所定労働時間30時間以上で雇い入れる場合に限り、紹介時点でその方が他の企業に在職中であっても対象となります

この特例により:

  • 通常は失業者のみが対象のところ、在職中の方も対象に
  • パートタイム等で就業中の方を、より安定した週30時間以上のポジションへキャリアアップさせる提案が可能
  • 潜在的な候補者の幅が大きく広がり、新たなマッチング機会を創出

キホン3:どんな「企業」が助成金をもらえる?(対象事業主と注意点)

助成金を受給するためには、紹介先の事業主も一定の要件を満たす必要があります。

紹介会社としては、特に不支給となるケースを事前に把握し、クライアントに的確な情報提供を行うことが信頼に繋がります。

助成対象となる事業主の主な要件

  • 雇用保険の適用事業主であること
  • ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により対象者を雇い入れること
  • 対象者を雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇い入れ、継続して雇用することが確実であること
    ※継続雇用の定義:「65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ当該雇用期間が2年以上であること」
  • 雇入れ日の前後6か月間に事業主都合の解雇(勧奨退職を含む)を行っていないこと
  • 雇入れ日の前後6か月間に、特定受給資格者となる離職者が、雇入れ日時点の被保険者数の6%を超えていないこと(離職者が3人以下の場合は除く)
  • 対象労働者の出勤状況や賃金の支払い状況を明らかにする書類(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿等)を整備・保管していること

紹介会社が特に注意すべき不支給要件

⚠️ 重要: クライアント企業に無用な期待をさせたり、後々のトラブルを避けたりするためにも、以下の不支給要件は「紹介前の必須スクリーニング項目」として必ず確認しましょう。

❌ 紹介前の接触はNG

ハローワーク等の紹介を受ける前から、事業主と対象労働者の間で採用選考が開始されていた場合は対象外です。

❌ 過去の雇用関係はNG

雇入れ日の前日から過去3年以内に、雇い入れる事業主と雇用、請負、委任、出向、派遣などの関係にあった場合は対象外です。

❌ 長期間の訓練・実習はNG

雇入れ日の前日から過去3年以内に、雇い入れる事業所で通算3か月を超えて訓練・実習等を受講したことがある場合は対象外です。

❌ 親族の雇用はNG

対象労働者が事業主や取締役の3親等以内の親族である場合は対象外です。

❌ 紹介時と条件が異なる場合

紹介時の労働条件と異なる条件で雇い入れ、労働者に不利益があり、本人から申し出があった場合は対象外です。


キホン4:いくらもらえる?支給額と期間の仕組み

支給額は、以下の要素によって変動します:

  • 対象労働者の類型
  • 企業規模(中小企業か否か)
  • フルタイム(週所定労働時間30時間以上)かパートタイム(短時間労働者)か

💡 短時間労働者とは: 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の方を指します。

支給額一覧表

対象労働者の類型企業規模助成対象期間支給総額支給対象期ごとの支給額
【短時間労働者以外】
① 高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等中小企業1年60万円30万円 × 2期
中小企業以外〔1年〕〔50万円〕〔25万円 × 2期〕
② 重度障害者等を除く身体・知的障害者中小企業2年120万円30万円 × 4期
中小企業以外〔1年〕〔50万円〕〔25万円 × 2期〕
③ 重度障害者等中小企業3年240万円40万円 × 6期
中小企業以外〔1年6か月〕〔100万円〕〔33万円×2期、34万円×1期〕
【短時間労働者】
④ 高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等中小企業1年40万円20万円 × 2期
中小企業以外〔1年〕〔30万円〕〔15万円 × 2期〕
⑤ 重度障害者等を含む身体・知的・精神障害者中小企業2年80万円20万円 × 4期
中小企業以外〔1年〕〔30万円〕〔15万円 × 2期〕

注意事項:

  • 〔 〕内は中小企業以外の事業主に対する支給額および助成対象期間です
  • 支給対象期ごとの支給額は、その期間に対象労働者に支払った賃金額が上限となります
  • 助成金は6か月ごとの「支給対象期」に分けて、最大2~6回支給されます

キホン5:有料職業紹介会社がやるべき「手続き」の流れ

有料職業紹介会社がこの助成金を取り扱うための具体的な手続きの流れは、実務上の最重要ポイントです。

ステップ1:助成金取扱事業者になるための「同意書」の提出

雇用関係助成金を取り扱うには、まず主たる事業所の所在地を管轄する労働局(事業主管轄労働局)に「雇用関係助成金の取扱いに係る同意書」を提出する必要があります。

同意が認められると:

  • 厚生労働省のウェブサイトに取扱事業者として掲載される
  • 正式に助成金関連業務を開始できる

ステップ2:求職者の紹介と雇入れ

助成金の対象となるのは、取扱事業者として認められた紹介会社からの正式な「職業紹介」による雇入れのみです。

以下は助成対象外となります:

  • 求職者からの直接応募
  • 職業紹介を介さない求人サイト経由での応募
  • 採用が内定した後に形式的に紹介手続きを行う「後付け紹介」

これはキホン3で解説した不支給要件「紹介前の接触はNG」に直結する最重要ポイントです。

採用決定後の形式的な紹介は、不正受給とみなされるリスクも伴うため、厳格なプロセス管理を徹底しましょう。

ステップ3:雇入れ後、紹介会社が行う手続き

クライアント企業が紹介した候補者を採用した後、紹介会社は以下の2つの手続きを速やかに行う必要があります。

1. 雇入登録届の提出

  • 提出先:紹介会社の事業所の所在地を管轄する労働局(紹介地管轄労働局)
  • 提出書類:「特定求職者雇用開発助成金対象労働者雇入登録届(様式第2号)」
  • 提出期限:雇入れ日から1か月以内

2. 職業紹介証明書の発行

  • 発行先:クライアント企業(事業主)
  • 用途:事業主が助成金の支給申請を行う際に添付が必要な重要書類

ステップ4:事業主による支給申請(全体の流れ)

全体の流れを把握するため、事業主側の手続きも理解しておきましょう。

事業主は6か月ごとの支給対象期が終了するたびに、その末日の翌日から2か月以内に管轄の労働局へ支給申請を行います。

申請時の必要書類:

  • 紹介会社が発行した職業紹介証明書
  • 支給申請書
  • 賃金台帳
  • 出勤簿
  • 雇用契約書 など

よくある質問(Q&A)

Q1:試用期間を設けている場合も助成対象となりますか?

A: 試用期間があること自体で直ちに助成対象外とはなりません。ただし、第1期の支給申請時点で試用期間が継続している場合や、試用期間と本採用で雇用契約が分かれている場合は対象外となります。

Q2:有期雇用契約ですが、本人が望む限り更新する場合、助成対象となりますか?

A: 有期雇用契約の場合、「本人が望む限り更新できる」といった自動更新の定めがある契約のみが対象となります。この旨が雇用契約書に明確に記載されている必要があります。勤務成績などに応じて更新を判断する契約は対象外となるため、契約書の内容確認が重要です。

Q3:対象労働者が入院などで実際の労働時間が短くなった場合、助成金はどうなりますか?

A: 実際の労働時間が所定労働時間より短くなった場合でも、助成金が支給される可能性はあります。ただし、支給額は減額調整されます。支給対象期間内の月ごとの平均実労働時間に応じて支給額が算定される仕組みです。


まとめ

今回解説した5つの基本ポイントを理解することで、有料職業紹介会社は「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」を効果的に活用できます。

この助成金がもたらす価値

クライアント企業へ

  • 大きな金銭的メリットを提供

求職者へ

  • 就職に困難を抱える方の雇用を支援

社会へ

  • 社会的に意義のある役割を果たす

助成金取扱事業者になるための詳細な手続きについては、グランアシスト社会保険労務士事務所へお問い合わせの上、ぜひ第一歩を踏み出してください。

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